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「考えとくよ。場所はメールで送ってくれ。仕事でたまたま日本に帰ってきたけど、来週末には帰らなきゃ」
そう言って、柾は手を振って駅に向かって歩いて行った。
俺は、そんな柾の背中を見つめて、胸がギュッと締め付けられた。
本当は、水也美に会いに来たんじゃないのか?
なんでこの時期に帰ってきたんだ?
水也美の誕生日を、祝いたかった?
本当は誰よりも、水也美を愛しているくせに…!
俺は、唇を噛み締めた。
ふと、俺の頬を、ひと雫の雨粒が叩いた。
俺は、灰色に曇る空を見上げると、心を映し出したかのように雨がジトジトと降ってきて、周りの人たちは雨宿りを探して小走りに駆け出した。
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