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柾だ。
一瞬だけ、ためらった。
でも、とりあえず電話に出ようとすると、
「おい、なにためらってんだよ、和依」
と背後から声がして、俺はまたギクッとして振り向くと、そこには柾が微笑んで立っていた。
「げっ!柾!」
「ほんとに失礼なやつだな」
「なにやってんの。こんなとこで」
「たまたま通りがかったら、目の前にお前がいた。なんだよ。連絡くれって…」
「水也美の誕生日パーティーだよ。顔くらい出せば?」
俺は口を尖らせて言うと、柾はなんだか少し苦笑いになって、俺の肩を叩いた。
「お前って、ばか。俺なんか声かけなきゃいいのに」
そんなこと言っても…。俺だってそう思うよ。呼ばなきゃいいのに…って。
だけど…。
口には出さなくても、水也美がなんだか寂しそうに見えるのは何故なんだろう。
そう思った時に、柾の顔が浮かんだんだ。
そんなことは、口には出さないけど。
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