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「そうだよね、ごめん。筆跡が分からないように書かれてたから、ダミーだったんじゃないかって可能性もあって」
「ダミー? 奥田さん……じゃ、筆跡を変える意味がないよね。
僕がヒナを騙すために手紙を書いたんじゃないかって疑ってるってこと?」
「ごめん」
すぐに頭を下げて謝る。
悲しげな彼の目の片方がいまだ眼帯で覆われているのを見て、むくむくと罪悪感がこみ上げて来た。
「……誰?」
「えっ?」
「誰が、そんなこと言ったの」
悔しそうに巧君が問う。
「誰って……色々な人からお話を聞いて、私が勝手な推測を――」
「嘘つかないでよ」
きっぱりと巧君が斬り捨てた。
「僕、ヒナの思考パターンは分かってるつもりだよ。鈍くて、マイペースで、すぐに人のこと信用して……
そんなヒナが、こういう推測を立てるわけない」
彼の言うことは全て的を射ていた。
私とは頭の出来が違う。
こんな調子で、私は彼からなにかを聞きだせるのだろうか。
「きっと、あのメンバーの中の誰かだよね。若竹きららさん? それとも……双治君?」
今度は私の目が泳ぐ番だった。
悲しげな表情ながらも、彼はそれを見逃さない。
「双治君、なんだね」
そう呟いて、とすんと背もたれに身体を預けた。
恐る恐る彼を見ると、疲弊したような顔で放心している。
魂が抜けた、という言葉がぴったりだ。
――巧君にとって、双治君はなんなんだろう。
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