第一話 クリムゾンレッド

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 あの時はかなり殴られて痛い目を見たが、今回俺が来生に頼んだのは上条を裸にひんむいて写真を何枚か撮ってもらうことだ。  出来れば怪我はさせたくない。  だが、それだけやればヤツのプライドも地に落ちるに違いないだろう。  意外と座り心地の良い革張りの椅子に身を沈め、俺はモニターを注視した。  上条はどうやら意識があるようだった。  無駄と解っているのか足掻いたりはせずに入り口の方向を睨んでいる。すると、たった今この部屋を出て行った来生が二人の体躯の良い男を連れて入ってくるのが見えた。  俺は音声を上げ、会話が聞き取れるようにした。 「あんた、本庁のエリートさんだって? この土地にはこの土地のやり方があるってのに色々と掻き回してくれて、こちとら迷惑してるんですよ。ちっと手荒なまねをしましたが、現場はお役所仕事と違うって事を、こちらの流儀で解って頂こうと思いましてねぇ……」  そう言うと来生は男達に目配せした。  男達は後ろ手に縛られた上条を両脇から支えて立ち上がらせた。ポケットからハンティング・ナイフを取りだした来生は、まずネクタイをぶつりと切り裂き、床に投げ捨てる。  脅しには効果的かもしれないが、ここを出る時、身に纏う服がないのは困る。  そんな俺の心配をよそに、来生はシャツの襟に手を掛け一気にボタンを引きちぎった。  瞬間、俺の目はモニターに釘付けになる。  何て綺麗な胸だろう……。  モニター越しに見ても石膏像のように白く滑らかな肌が、うっすら滲んだ汗で艶やかに輝いているのが解る。  ほんのりと色づいた乳頭、形の良い臍。恐怖からか、怒りからか、大きく脈打つ鼓動で上下する胸の筋肉の動きにあわせ、引き締まった腹部が収縮している。  そこで俺は、来生の口元が歪んだのを見た。  斜めからのアングルではよく解らないが、何か獣じみた残忍な意思が背中から伝わってくる。  そして次に来生が起こした行動は、俺を驚愕させた。  ナイフで革ベルトを切り裂き、来生はスラックスの中に手を差し入れたのだ。もぞもぞと動くその手が、布の動きでわかる。 「なっ、何してやがる?」  小さく呟きながらも俺は、じょじょに湧き上がる興奮を抑えきれなかった。  その俺の様子を見透かしたように、来生はカメラに向かってにやにや笑っている。
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