第四章  藤澤活動開始

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第四章  藤澤活動開始

 藤澤幸利。25歳。このホテルに勤めて2年と半年を越える。180センチの筋肉質の体つきとホテルマン風のいかにも優しげな風貌と身のこなしは、彼の周りに女性の存在を強く匂わせる。だが、相川の電話にさえも喜びを覚えるほどに女性との付き合いはない。何れ自分が引きずっている想いを遠ざけてくれる女性が現れるはずだ。焦ることはない。これが今の彼の心情であり、それゆえに自由な時間はもてあますほどにたっぷりとあった。  相川の言った『裏組織』が耳朶の奥で震えているのに煩わしさを感じた藤澤は、先ず古橋さんの死を調査してみることにした。古橋さんは6月17、18日の両日宿泊され、19日の朝にベッドでの死が確認されている。若し『裏組織』なるものが存在し、その組織の誰かがこのホテルの泊まっている可能性があると考えてみる。そうなると17、18日の宿泊人を洗い出すのが最初の仕事になりそうだ。このホテルの部屋数220室と、夏休み後の平均的な空き室25%とすれば、2日間で最大330人程が調査対象になる。しかし、再利用客と家族での宿泊、それに外国人を外せば、調査の対象数はかなり減ってくるだろう。
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