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こどもは半人前だってよくいうけれど、こどもも人数をかぞえるときは、一人、二人って数える。
遊園地に入場するときも、バイキングレストランで食事するときも、人数はごまかせない。
もちろん、きちんと一人とカウントされても、こども扱いなわけだけど。
こどもは料金も半額で、こどもにしかもらえないアニメの缶バッチだってもらえたり、夏休みもたっぷりあるし、半人前の特典っていうのがあるのがうれしいが、たまにおとなの特典にもひかれるんだ。
もしもこども二人でおとな一人とみなされるなら、おれは誰とペアを組もうか考える。
一番はじめに貴史の顔が浮かんで、おれは少し複雑な気分になった。
貴史は傲慢でおれに命令ばっかりするいやなヤツだ。
一年生のときに同じクラスになって、それ以来五年間ずっと同じクラスなのだが、相変わらず上から目線だし、つるんではいるけど友達なのかなってちょっと疑問に思う。
はじめて言葉をかわしたとき、自分のことを「ぼく」といっていたらひどくばかにして「まだぼくなんていってるのかよ」と笑った。
「ぼくちゃん」ってあだ名をつけられて、自分のことを「ぼく」とも「おれ」ともいえなくなって、おれは自分自身のことを言い表せなくなった。
でも、ずっと心の中では「おれ」って思ってるんだ。
つい口がすべって「ぼく」なんていってしまわないように。
そのうち貴史は大声で「ぼくちゃん」と呼びかけるのが恥ずかしくなったのか、おれのことを「大地」と名前で呼ぶようになったが、それでもおれはまだいえない。
「おれ」といったら「似合わねぇ」とかいって、また貴史が笑い出しそうな気がするから。
信頼する友ではないんだけど、二人ペアになって未成年おことわりの場所へ行けるとしたら、貴史が一緒だと心強いんじゃないだろうかって、おれはどこか貴史のことを勇気が湧き出るみなもとのように見ている部分があった。
貴史はおれに命令するだけで自分はやろうとはしない。
ひょっとしておれは断る勇気がないんじゃなくて、実行する勇気があるんじゃないだろうかって、自分をなぐさめる。
本当はおれのほうが上で、いつか貴史を見返せる。
身長だって追い抜いた。
四年生になってからはじめたサッカーだって、テストの点数だって、バレンタインでもらったチョコの数も……もちろん義理チョコだが……、おれの方がちょっと上だ。
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