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“妊娠中は指がむくむから大きめに”なんて店側の照れ臭いアドバイスに従って緩めにしたけれど、私の手が緊張で強ばっているせいか、指輪は少し関節で引っ掛かった。
「意外と難しいな」
こっそり黒木を窺うと、少し神妙な表情で一点を見つめる伏せ目が色っぽくて、慌てて視線を指輪に戻す。
自分の指の関節の皺がやけに不細工に思えてきて細くなれと念じて息を止めているうち、指輪はするりとおさまった。
照れ臭いのも忘れ、黒木に取られたままの手に輝く大粒のダイヤに見とれる。
無駄な出費をさせたくなくて卸売店で買うことを押し通したのに、結局黒木が予算を下げなかったため、予定外に大きなダイヤになった。
「綺麗……もったいないぐらい」
しばらく見とれた後、嬉しさをうまく言葉にできないまま黒木を見上げると、じっと私を見下ろしていたらしい彼と目が合った。
「もっと堂々としていればいいよ」
黒木はそれだけ言うと、そのまま私の手を握って歩き出した。
今のはどういう意味だろう?
でも繋がれた手が気になって考える余裕がないまま、ふわふわとした足取りで店を出た。
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