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気がつくと、俺はソファに横になって寝ていた。少し頭に柔らかいクッションの感触が伝わって安心する。そのとき、ふと上を見上げると俺の真上には、麻悠…否、拓海が俺を見下ろしている。そういえば、クッションにしては、頭の部分だけやけに温かく感じる。
「まさか……ごめん、拓海!迷惑じゃなかったか?!」
体を起こした俺は、自分の頭の下にしているものが拓海の膝(正式には麻悠の)だということが分かり、拓海に謝った。
しかし、彼はそんなことなど気にしないとでも言うかのように首を横に振り、
「いいよいいよ。たまの休日っていうこともあるし、気が抜いて疲れてるんだろ? だったら、しばらく寝かしてやろうかなって思ってそっとしといただけだから。まあ、少しびっくりしたけどな。」
と、笑って許してくれた。俺は気恥ずかしくて、顔が熱くなりそうになった。
「なんかすまんな…。そういや、俺ってあれからどれぐらい寝てた?」
「うん? まあざっと一時間ぐらいか?」
拓海の返答を聞いて俺は驚愕した。何と自分は一時間も拓海に膝枕してもらっていたとは、少し情けなく感じてしまう。そうなると、いくら中身が拓海とはいえ実質麻悠の膝枕をしてしまったのと同等の意味になる。
そう思うと、少し恥ずかしいような、しかし嬉しいような気持ちが込み上げて思わず俺ははにかんでしまっていた。
「どうした?涼太?」
「うわっ! あ、ええええーっと、何でもない!何でもないから!」
余程変な顔をしていたのか拓海に不思議そうに声をかけられた俺は、慌ててそう返事をした。
本当に何て、甘い生活なんだろうか。そう思うことが何回もあった。人間とは、甘い蜜に触れるとその蜜の味が二度手にしたくなるのはこのようなことか。
しかし、どんなに夢の気分に浸っても忘れてならないことが一つある。
それは、この麻悠の身体に拓海の魂があるということだ。
確かに拓海には凄く助けてもらっている。しかし、それと同時に彼には非常に申し訳ない気持ちでもある。なぜなら、この偽りの生活が果たして彼のためになっているのか、俺は彼を振り回していないか。
俺は心のどこかでこのままではいけない、彼に甘やかされっぱなしではいけないと思っていた。
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