第1章

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安積圭太(あさか けいた)が、 痛みを通り過ぎると体はもうどうでも良くなって脳にいちいち伝えなくなるのだと知ったのは六才の時だ。 教えたのは実の母親で、 それ以来、 会ってない。 施設に引き取られた圭太は、 その後、 高校まではなんとか出た。 頭が悪いと有名なレベルの低い男子校だったが、 あまり勉強が得意でない圭太にはちょうど良かった。 明るくなってきた窓の外をぼんやり眺めていると、 向かいに建つ大型マンションの廊下の照明が一斉に消えて、 そんなくだらないことでちょっと感動をする。 もう指の一本も動かすことができなくて、 ベッドの半分以上を侵略している男の体を押し戻すこともできずに、 圭太は窓際で小さく固まって寝ていた。
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