忍び寄る過去-2

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黙ったままエレベーターホールへ行き、エレベーターが降りてくる間に私はたまらず口を開いた。 「……すみませんでした」 私は部長の背中に向かって俯いたまま小声で言った。 喉の奥が狭まって、大きな声が出せなかったのだ。 「君に謝られる理由はない」 「でも……」 「俺は彼のやり方が気に入らなかっただけだ。 君が何をした?好きな男と寝て、情事の最中にピアスを無くした。 それだけだ」 彼はそれを私に背中を向けたままで言った。 すると、その言い方が妙に気に障(サワ)った。 「部長」 私は彼の背中を見上げた。 そして、ゆっくりとその背中が振り返る。 「何だ?」 彼の目はいつにも増して冷めていた。
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