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「……蓮池、葉月」
私の名を復唱する彼女には、もしかすると蓮池さんの妻だとわかったのだろうかと、焦る。
私は知らなかったが蓮池さんは有名な人らしい。
彼が結婚したという話は雑誌にも載ったようだった。
私は未成年ということもあり、名こそ載らなかったが大学生だという情報は載っているという。
なんだか怖い世界だ。
「な、何か……?」
恐る恐る口を開くと、友梨香は口角を上げた。
「H.H」
「え?」
「今日の占い、私Hの人と縁があるって。葉月のことだったんだ」
「え?」
「私ね、占いが大好物なの」
大好物と、まるで食べ物を指すような物言いに、私は吹き出してしまう。
「葉月は、占いは嫌い?」
「え、私?」
いきなり葉月と呼ばれたが全く嫌じゃない。むしろ、嬉しい。
「わりと、好きです」
「やった、ねぇ授業が終わったら時間ない?いい占い師知ってるの。行かない?」
「伊藤さんと?」
「そう。ねぇ葉月、私の事は友梨香って呼んでね」
「あ、はい」
友梨香は私が大学で、できたはじめての友達だった。
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