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ピンポーン。
おや、今頃誰だろう。時計の針は、午後九時を少し回っている。
蜂谷優也は、面倒だと思いながらも玄関へと向かった。
扉を開けると、そこには色白で黒髪の長い可愛い女性がおり「夜分遅くにすみません。隣に引っ越してきた三浦早苗といいます。これお口に合うかどうかわかりませんがどうぞ」と微笑みかけてきた。
「えっ!?」
『みうらさなえ』だって。そんなことってあるのか?
「あの、どうかされましたか?」
早苗は怪訝そうな顔で菓子折りを差し出したまま固まっている。
「あ、いえなんでもありません。隣に引っ越しされたんですね。どうもご丁寧に」
優也は、自分で何を言っているのかわからないくらい頭が回らなくなった。心臓の鼓動も早い。自分の好みの女性が突然現れたら、パニック起こすってもんだ。
いや、それだけじゃない。
パニックを起こした原因はもうひとつあった。本当のことを言ったら、もうひとつの原因の衝撃のほうが強いかもしれない。
おそらく、今の自分の顔は少しばかり引き攣った笑顔になっていたことだろう。
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