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「その場限りの出会いだ。別にかまわないだろう。知人ならちゃんと説明するけどな」
「まあそうだけど」
三原は二十階で一度降り、すぐ隣の小さいエレベーターへ乗った。
また、カードキーを差し込む。
「あれ?このエレベーター、スタッフ用って書いてありませんでしたか?」
「さあ」
曖昧に答えた三原は二十五階で降りた。すぐ目の前に部屋のドアがある。
そこで初めて理香を下へ下した。
先ほどエレベーター内でも使用したカードキーでドアを開けた。
ホテルのフロントにも行っていないのに、カードキーを持っているなんて。しかもこの部屋は特別らしい。
「歩けるか? 厚いじゅうたんだし、掃除してあるからもう裸足で大丈夫だろう」
「はい」
三原も入り口で靴を脱いだ。
そこはホテルの一室というよりもマンションのようだった。小さいがキッチンもあるし、広いリビングと大きなベッドルームに分かれていた。
「風呂場はそこ」
「え?」
「冷たい水で足をあらってこい。マメがつぶれてる。消毒してやるから」
「はい」
「なんならシャワーを浴びるか?」
「結構です」
三原は笑って、棚の上にあった救急箱を手に取った。
浴室はきれいに掃除をされていたが、三原の私物だろうと思われる洗面用具が置いてあった。
とりあえず、ストッキングを脱いで、大きなバスタブの淵に座り、水を出した。
足を洗う。両足のかかとのマメがつぶれていて、血が出ていた。
小さめのタオルを取り、押しつけるように水気を拭き取る。タオルに血がつかないように気をつけた。
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