第1章

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入絵直也() 22歳 入絵写真館四代目当主。 江戸時代から続く写真館の当主。 常に右目に包帯を巻いている。 子供の頃、代々受け継がれてきた江戸時代のカメラから発された、謎のフラッシュをゼロ距離で受けたことにより原因不明の失明。 のち、方目での生活を余儀なくされるが、五歳の頃、親友の沖田光にモノ英雄のサインカードを見せられた際、興奮して眼帯を取って両目でそのカードを見たところ、カードの写真の中に飛び込んでしまい、その写真の中でモノ英雄に会えたことで自分の『写真の中に入ることができる能力(通称・photographic journey)』に気づく。 それは『片目の世界(2D)』である写真を両目で見る、つまり、包帯を取って失明した右目と、健在な左目で写真を見る(3Dの世界に見る)ことによって発動し、写真のなかに入り込み、写真の写り方や内容を変更する『可能性』を手に入れることができるというもの。 つまり、彼は写真の中の過去を『行動』し、写真内の過去――事実を変えることによって、その後撮られる写真の内容を変更することができる。 よって、必ずしも望み通りに写真が変化することはなく、どう写真が変わるかは、彼の腕次第ということになるが、 ともかくそれによって彼は世界でもっとも精巧な偽造写真を作ることのできる写真屋の店主となる。写真の中の『現実』をねじ曲げることによって。 写真に入り込むと、写真を撮った日から最高で三ヶ月前まで遡ることができる。 この能力において最も重要なことは、 『写真の過去は変わっても、現実の過去を変えることはできない』 ということ。 例えば、写真のなかで直也が、本来は死ぬはずだった人間を助けて、本来なら写るはずのなかった人間が写真に写ることができたとしても、 現実世界(つまり現在)に、その人が生き返ることはない(死んだという過去の事実は変わらない)。 あくまで写真内にのみ効力を発揮する能力であるということである。 これは、写真がある一点の過去のみを写したものであり、『その先』がない、つまりは、今現在にたどり着くことが不可能であることが原因である。 『この思い出を、せめて写真のなかでは思い通りのモノに変えてほしい』 彼の写真館には、そんな願望をもった人々が写真をもって訪れる。
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