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汗が噴き出す素肌を風が撫で冷やしていく。
混乱の中、思考はまとまらず、身体は小さく振るえ、視線も定まらない。
坂崎?坂崎がなんで?どうして?
自分の背後にいる同級生が何故こんな事をするのか理解できない。
いや、理由ははっきりと言ってた。
「妹をひどい言葉で傷つけたから。」
でもそんな言葉も全オレの頭には全く入って来なかった。
同じ高校のダチと街で遊んでちょっと遅く帰っていた。
帰り道にある小学校のグラウンドと校舎の間には市道が通り、そこを結ぶ歩道橋は歩き慣れたいつものコースだ。
校舎や体育館、グラウンドに接するその場所は街灯もあり見通しはいいが、夜8時をすぎれば人も車もほとんど通らず、民家やビルも遠い。
だけどそこで顔見知りが声をかけてきたとして、警戒する理由はオレにはなかった。
ただ、いつもより表情が少し固いのが気にかかったくらいだ。
「皆川、ネクタイ…。」
そう言ってだらしなく巻いていた制服のネクタイを外されても、キョトンとして
「ちょっと、歩道橋の柵を持ってみて。」
そういわれれば、素直に柵をつかんだ。
そのまま右手をネクタイで括られても
「え?何?縄ぬけ?」
まあ、高校生のノリなんてこんなもんだ。
ベルトを抜こうとされればさすがにあせって抵抗もするが、真面目な坂崎の悪ふざけが珍しくて
「いいから…!」
と何がいいのかさっぱりわからない言葉に、何か実験みたいなものか?と勝手に理由づけしてあっさり従ってしまった。
そのまま左手も柵を持たされベルトでくくりつけられたとき、全身から汗が噴き出した。
頭より身体が先にヤバいと感じたみたいだ。
でも、身を守るようにしゃがみ込むより、坂崎がオレのズボンを下着ごと引き下ろすのが一瞬早かった。
歩道橋をつかんでケツ丸出しでうんこ座り。
間抜けなオレを坂崎が笑いもせずに見下ろしていた。
急すぎる展開に全くついていけなかった。
「何コレ?え?なんで?」
あせって同じ言葉を繰り返すだけ。
坂崎はそんなオレを無表情でスマホ撮影していた。
「皆川、妹をひどい言葉で傷つけただろ?」
そんな言葉も、パニクってる頭には全く入って来なかった。
撮影から逃げようと必死で結びつけられた両手を引っ張っても、ただ手首がすれて柵を握った指が痛むだけだった。
自分で言うのもなんだが、オレはまぁまぁアホだ。
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