バターフライエフェクト

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 まずは、バターがいるな。バターの主原料は牛乳。つまりモーモー……牛がいるな。牛はどこから調達してくれば良いだろうか。ええい、面倒だ。私は神様、全能である。クリエーター、つまり造物主である。  パンがなければ作ればいいのよ、とは名言であるな。誰が言ったかって? 私だよ。  牛は創っておこう。なに、牛を創る労力など小指1本分さ。楽勝である。  次は、揚げ油であるな。植物油が良いだろう。オリーブオイルなんていかにも体に良さそうじゃないか。少しでも健康を気遣う。神様も大変なのは推して知るべきであろう。  よし、オリーブは適当に生やしておこう。ふむ、薬指1本分の労力も必要ないかもしれんな。  おっと、そうだ。油を入れるための容器が要る。  フライパンか……。鉄……鉄がいるな。鉄とは元素記号的に言えば、Feである。元素番号で言えば、26である。分子量は約56。うむ。  取り敢えず、ビッグバンでも起こしておけば、いずれ水素原子が原子核合成して鉄となるであろう。これはなかなか骨が折れる――と言っても、労力的に言えば100メートル走くらいなもんだがな。  後は、超新星爆発による熱でフライパンの形に鉄を変形させれば完璧だ。揚げるにもこの余熱を使えばいいだろう。極めてエコである。  ん……ビッグバンだと?  ふはは、さすが天才! そもそも、牛やオリーブを創るためにはビッグバンを起こして、地球ができる必要があったな。地球が雨で冷えたら海ができ、海中生物はやがて地上生物へと進化する。自ずとオリーブや牛が地球上に登場するのだ。  フライパンを創るつもりが、その延長で牛やオリーブを創ることになるとは。さすがは全知全能の神である。これぞ予定調和というやつだ。
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