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「そう言えば、クロード王子殿下を負かされた経歴をお待ちだとか」
と、ここでフローリア嬢は扇をピシャリと閉じた。それを合図に、会話をしていた女子生徒達が口を閉じる。
「魔法学園で魔法無しで好成績ならば、それは1つの魅力です。クロード様も彼がお気に入りらしいですし、外見では見透かせない魅力があるのでしょう。これは、私の早とちりかしら?」
どうやら勘違いだと分かってくれたらしい。柔軟な人だ。それとも、ナイトの説得力が凄かったのか。
対してこちらはと言うと、
「ナイト殿、何をどさくさ紛れて世迷い言を口走っているのです?」
平和的な向こうに比べ、こっちは火花が散っている。火花を出してるのはイサメだけなのだが。
「ご自分の立場を理解しての発言ですか?」
「だって……ド本命だし。嘘は吐きたくないし」
イサメの叱責にナイトは一瞬萎縮するも、しかし言い返す。
「イサメだって三種闘技会に出たのはダリア君目当てでしょ?」
「あなたの様に私情を挟んではいません。私はメイドとしてダリア様に仕える義務がありますので」
「ふーん? じゃあイサメは、メイドの義務が無かったらダリア君から離れるのね?」
「………」
「私情が無かったって言えるのね?」
「私情です」
「好意の欠片も無いの?」
「塊ですら表現し切れません」
「そういう事よ」
「そういう事ですね」
王子からの電話が気になり過ぎて途中から話が右から左に抜けているが、イサメとナイトの口論は終了したっぽいかな?
イサメとナイトの会話を見計らい、フローリア嬢がナイトに歩み寄って来る。お詫びを入れに来たみたいだ。
先程から蚊帳の外状態の俺は、電話をしても大丈夫だろうと思い、少し離れて王子に折り返す。
「も、もしもし」
『もしもし、クロードだ』
王子は待っていたのか、直ぐに出てくれた。
「あ、どうも。ダリアです。えっと……」
『電話の用件だな? お前の出店するクレープ屋だが、フローラと隣だろう?』
「え?」
なんで知っているんだろう、と思い言葉を詰まらせる。王子はクジ引きにいなかった。店の配置の事を知るのが早過ぎるのではないだろうか?
『ああ実は、フローラに出店場所を教えられてな、顔出しに向かう所だったのだよ。それで道中にオボエ先生と鉢合わせてな。聞けばダリアも2号館の3階で出店する、と言うではないか』
王子は俺の疑問を手早く拾ってくれた。なるほど。リュウに聞いたのか。じゃあもうそろそろリュウもここに到着するのかな。
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