第11話【準備期間】

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意気軒昂するフローリア嬢を、ナイトは何言ってるんだろう、といった困惑の表情を浮かべている。 「ナイト殿、言われていますよ?」 「そうね」 ナイトは頷き、一歩前に出る。 「えっと……誤解みたいだから言っておくけど、私、クロード王子に興味無いのよ。全然絡みもないし」 「何を仰るのかと思ったら、そんな上っ面な言葉を……。クロード様に三種闘技会のチームに入れて貰う様に頼んだのでしょう?」 「それはダリア君がクロード王子に誘われたからよ。ダリア君が参加しなかったら、そもそも三種闘技会に出る気なんてなかったし。ダリア君がクロード王子のチームに入ったから、私も入ったの」 「あらあら。ダリアさんを隠れ蓑にする気なのかしら? 私の目は誤魔化せませんわよ? ダリア君目当てだなんて、言葉ではどうとでも繕えますのよ? 本当は、ダリアさんに好意の欠片も無いのでしょう?」 「ド本命だけど」 ナイトの有無を言わさない一言に、フローリア嬢の肩がビクリと跳ねた。あと急に着信が鳴り、俺の肩も跳ねた。 「それは……クロード様が?」 「ダリア君がド本命だけど」 俺の位置からではナイトの表情は見えないが、背中からは気迫が感じられた。 フローリア嬢も「あら……?」と、互いの解釈の食い違いに、視線が明後日の方向に向いた。あと着信先が王子だったので、どうしたもんかと俺の視線も明後日の方向に向いた。 俺の頭に真っ先に浮かんだのが、これイサメが反応するぞ、である。対策しなくては。てか、王子の電話対策の二正面作戦である。どうしよう。 フローリア嬢はやや間を置いて、後ろの女子生徒達と話し始める。 「……氷川さん。ナイトさんは本当にクロード様に気があるのかしら? なんか凄い……失礼を働いている気がするのだけれど。顔を見れば嘘でも見抜けると思ったのだけれど……ナイトさん、本気じゃない?」 「も、申し訳ありませんわお姉様。私も人伝で耳に入れただけですので。しかし……ナイトさんが噂通りのご麗人ならば、あのダリアさんと言う一般生徒に惹かれる理由が……」 氷川と呼ばれた女子生徒が言葉を濁し、他の女子生徒が思い出した様に言葉を繋げる。 あ、電話切れた。 「ダリアさんと言えば……確か魔法が使えない方とお聞きしていますわ。校内模試では上位の方で良くお名前を拝見しますわ」
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