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『それでフローラと揉めてないか心配してな。中々に好戦的でな、私の周囲に怪しい反応をする者がいたら良く噛み付くのだよ。ナイト辺りに噛み付いているんじゃないか? 私に向けてではないにしても、ナイトは良くそわそわしているからな』
流石は王子。婚約者の事はお見通しか。ナイトへの洞察も鋭い。
『一応話はしておいたんだが、あいつは思い込みが激しいからな。周りの意見も飲み込んでしまうし』
話を聞きながら、俺の視線はナイトとフローリア嬢へと移る。フローリア嬢が申し訳なさそうに目を伏せていた。
「ナイトさん、とんだ非礼を……。何かお詫びを……」
「いいのよ、気にしないで」
「そういう訳には参りませんわ。あ、そうだわ!」
フローリア嬢が紙切れをナイトに手渡している。
「特別券?」
「私達、占いの館を開きますの。タロットやトランプ、手相と言った様々な形の占いをご用意しますわ。私は占星術を嗜んでおりまして、ナイトさんが占い以外にも何かご相談があれば是非お立ち寄り下さいな。その券に書かれた時間でしたら、必ずお相手出来ますので」
「お姉様の占星術は、それはもう凄いんです! 私は最近、鍵を紛失してしまったのですが、お姉様に探し出して頂きましたわ」
「確かに凄かったです。鍵を失くした、としか情報が無かったのに、ピタリと言い当ててました。職員室にある特別教室の貸し出し用の鍵と一緒に引っ掛かっていたんでしたっけ?」
ナイト達が話し込んでいる。フローリア嬢と女子生徒が盛り上がっているな。
俺からはいざこざが見えないので、そのまま伝える。
「ああそれは、もう済みました」
『なんだ、揉めたのか』
電話越しからでも伝わってくる王子の苦笑い。
『分かった。もうそこまで来ている。少し待て』
とだけ告げられ、電話は切れた。
「ダリア様、王子殿下ですか?」
と、いつの間にか側にいたイサメの質問。
「うん。フローリアさんと揉めてないか心配してた」
「なるほど。様子を見に来られたのですね」
イサメの視線が俺から外れ、廊下の奥の角に向けらる。釣られる様にその視線を辿ると、丁度のタイミングで曲がり角から王子がリュウと一緒に現れた。
「クロード様!」
真っ先に反応したのはフローリア嬢。お淑やかな面持ちから一変し、小動物のような笑顔になる。声のトーンも2段階位上がった。
すげー。大人っぽい雰囲気と色気が出てたけど、一瞬で消し飛んだ。
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