つぎはぎ少女

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 私は一人だった。  なのにみんなには誰かがいる。  だから私は、人とは違うことをした。  そこから私は、傷をつけ始めたのだ。  ――――自分に。  みんなはそれを笑った。  きっと嘲笑と侮蔑の笑みを浮かべていたのだろう。  それでも私は嬉しかったのだ。  誰かの気を引けることは――――  それからどれくらいの時が流れたのか。  傷だらけの私を見てみんなは私を、つぎはぎ少女と呼んで回った。  そして大勢の人目に晒された。  つぎはぎ少女の名は。  私の身分とは大違いに。  独り歩きしていった――――  そのうち、私を怒る人が現れた。  全身が傷だらけの身体を見て、こう言い放った。  どうしてそんなことをするの、あなたは自分が大切じゃないの。  ……知らなかったのだ。自分は大切にするものだと。  そう言うと彼女は私を抱きしめてこう言った。  ――――それじゃ、今日からあなたは私のものよ、と。  それでも私は傷つけることをやめなかった。  傷つける以外に、彼女の気を引く方法を知らないのだから。  傷つけて、怒られて、そのうち頬を叩かれるのが日課となった。  傷をつけ尽くした身体に傷をつけるしかなくなった私は、とても絶望した。  そして彼女は言ったのだ。  あなたは私のもの。勝手に人のものを傷つけるのは困るのよ。  傷をつけていいのは、私だけなの――――  私は傷をつけ続けた。  彼女に見てもらえるなら。  四肢から身体、首、顔までも。  そうしているうちに彼女は叩くのをやめた。  無駄だと悟ったから。違う。これ以上私を傷つけたくなかったのだ。  時には内臓すら晒して数週間の入院にまでなったこともある。  そして最後に、自らの心臓を抉り出し、こう言い放つ。  ――――ありがとう、さよなら。
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