翼が二羽

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 ◆放課後──  俺は帰宅部を推したんだが、阿久津は中学と同じテニス部に入るのを決めてるらしく、もう一緒に帰ってくんねぇー……。 「もうテニスは止めたんじゃなかったのか?」  俺がそう言って過去の決意を思い起こさせても、阿久津は──。 「ああ、最初はそう思ってたんだけど、なんかもったいなくて」  阿久津ちゃんよ~。俺との時間が減るのも、もったいないぞ? 「ふーん。そんなもんなのかー」 「佐々良も何かクラブ入らないのか?」 「俺はアッチをやってるから」 「ま、そうだな……」  まだ入部はしてないけど、この機会にと、俺一人で帰る練習をさせるらしい。  とか、なんとか言って。どうせ女だろ? 女をどっか校門とかで待たせてるだろ?  俺も知ってるんだから! 「わっ!」とか脅かし愛したり「だーれだ」とか目ん玉グリグリしたり「捕まえてごらーん」「あはははは」なんてやって、チチクリあうんだろう? 知ってるんだからー。  ……。  学校から俺ん家まで結構あるぞ? かなり、多分、一キロじゃきかないな、二キロ、いや三キロ、もしかして五キロ? 十キロはさすがに無いけど……。  チャリで二十分? 正確に計っこと無いけど、二十分以上、三十五分未満ってとこだ。  もう道は覚えたけど、万が一ってこともあるんだぞ? 阿久津……。  ──ハァ。  もぉ。しゃーねぇーな、俺の方から折れてやるよ。  邪魔しちゃ悪いから、今日は一人で帰ることにした。 「阿久津(あくっ)ちゃん、まだ教室に居るのか?」  中学の頃にふざけて『あくっちゃん』と呼んでたら、いつの間にかそう呼ぶようになった。今でもたまにそう呼ぶ。小学ん時は『あくつー』だった。そのままだ。 「ああ、もうちょっと居る」 「そか。彼女によろしくなー。今度紹介しろよ~」 「あっ? だから部活について色々と、職員室に聞きに行くだけだよっ!」  そういうの兄弟とか姉妹とか、ツレとかに聞かないか? 阿久津、真面目だな~。
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