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■翼が三羽
◆翌々日・憩いのデジュネ
今日の昼食は、いつも通り、俺と阿久津と弁当だ(いつもと言ってもまだ入学して間もないが)
──の筈なんだが。
もう一人。
そう、ちまっこいのが一人入ってる。
(誰だッ?)
阿久津の後ろで弁当箱抱えて待っている。
女みたいなナヨッとした奴だから「もしかしたら!」と俺の野生の勘が <危険だ> と知らせる。
阿久津、ダメだぞ! 絶対に引くな。
「俺はぜってぇ~人に席なんか譲んねーからなー!」
早速キリリ眉で俺の固い決意表明を述べたら、
「分かってる、分かってるって」
と、俺をとりなす阿久津。
「それに、他の奴の席なんかもゴメンだ! 誰が座ってやるもんか」
そう、俺は人に席を貸すのも、他人の席を借りるのも嫌だ。
──と言うのも。
昨日、阿久津が休んだもんだから、お昼に、女から「あんた、一人なんだから、この席貸してくんなーい?」なんてことを言われたけど「嫌だ」と断ったら、後ろの方で別の女が「うわぁ……痛い」とか言っていた。だから、もうそいつらとは口聞いてやんねー。
「ごめんね。ボク、阿久津君にお昼誘われちゃって、佐々良クンには迷惑だった?」
と、この女みたいな顔した茶坊主が、俺に気を利かせて”正論”を吐いたのに、阿久津の奴は、
「ああ~いい、いい。気にしなくても。こいつ自分の席さえ使われなきゃ、危害加えないから────。佐々良、昨日は悪かったな」などとほざいた。
なんて言い草だ! それじゃあ、まるで、俺は野犬か、捨て犬だ。同じか……。
ふと茶坊主を見て俺は思った。(既にランチは開催されていた)
「それにしてもお前、女みたいな顔してんなー? あれだろ? よくある──」
モグモグ。モグモグ。
茶坊主は「うん?」と小首を傾げて、何か言いたげだったけど、俺は更に口いっぱいにおかずを頬張りながら話を続けた。
「本当は女だけど、男の格好で学生生活を送ってるってやつ、あんだろ?」
確かアニメ化されてたよな?
今じゃ映画なんかもバンバンと出して、大傑作を次々にあみ出してる、権田藁岡先生の、知られざる初期の頃の作品。そう、あの名作だ!
「違うよ~。よく言われるんだけど」
はは。阿久津、言い返されてやんの。チョーだせぇ~。
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