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ゲートをくぐる時、一瞬振り返りそうになったけどーーー
止めた。
何か悔しかったから。
弟子として恋人として最後の私の意地だ。
カッコつけた事いって本当は今でも私の事を行かせたくない癖に。
毎晩々、私の事をギュッと抱きしめて寝てたのは一体、どこの誰だ?
だったら私もカッコよく旅立って
師匠の事なんか考える暇もないくらい働いてやろうって思ったんだ。
早く一人で歩けるようになる為に。
早く私の帰るべき場所に戻れるように。
だから一度も振り向かなかったし、不思議とその場では涙もでなかった。
ただ飛行機に乗り込んで座席につき離陸した時漸く、私の目から涙が一筋こぼれた。
一度こぼれだした涙は止まらなくて
人目も気にせず嗚咽するほど泣いたんだ。
隣の席のおばさんが心配してたけどそれでも泣く事を止めなかった。
だって私には解るから。
今、いくら泣いていてもやがて飛行機が目的地に着陸し新しい地に一歩足を踏み出した時
全てが始まる事を。
それは私にとっていつか必ず戻るであろう
私の帰る場所に向けて歩きだす
第一歩だから…
いずれその時が来たら今度は私があの人の元へ福となって帰ってあげよう。
さみしがり屋のあの人を誰よりも幸せにするために。
笑顔にする為に。
そう決意をすると私は笑顔で新しい一歩を踏み出した。
『笑う門にはオレ様がきた!!』
終
ここまで読んで頂きありがとうございました。この後、『笑う門にはオレ様がきた??再会編』に続きます。
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