逢魔が時、平行線の交差点にて

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その日、見慣れたお屋敷はいつもと違っていた。 家中に張り巡らされた白と黒の垂れ幕。 黒い衣服をまとった人がたくさん押し寄せている。 この日はご近所で一番立派なお屋敷に住む、おじいさんの葬儀の日だった。 幼い瑞樹は母に手を引かれ葬儀に参列した。 このお屋敷のおじいさんに、瑞樹はよく遊んでもらっていた。このお屋敷にもよく招いてもらっていた。 両親が早くに離婚して母と二人暮しだった瑞樹にとって、本当の祖父のような存在であった。 当時5歳かそこらの瑞樹には多くのことはわからなかったが、この日が何やら特別な日だというのは肌で感じていた。 葬式独特の雰囲気に、瑞樹は恐縮して身を縮める。 しかし、瑞樹にはどうしても理解できないことがあった。 「うっ…おじいちゃん…っ」 「お父さん…」 出棺の際に親族らが棺に集まり、むせび泣き嗚咽をもらしている。 棺の中のおじいさんに笑いかけ花を添えながら、涙をこぼしている。 そして、その場にいる皆が沈痛な面持ちでその光景を見つめているのだ。 瑞樹はぱちくりと目を瞬かせた。 ぬぐいきれない違和感を感じていた。 この異様な光景に、瑞樹は母に尋ねた。
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