夏霧に濡らされて

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「じゃ、またな」 「ごちそうさまでした」 閉店時間ギリギリまで盛り上がってしまっていた私たちはカウンターの中で閉店準備をする北川くんの前を歩く。 「おぅ、気をつけて帰れよ。三好とモリは代行呼ぶから、それで帰れよ」 「サンキュー」 店の扉を開けて外に出ると、ひんやりとした風に吹かれて体温が下がっていく。 駐車場の大きな照明は消えていて、店の前の通りを走る車の数も減って外灯が辺りをぼんやりと照らす。 私たちは時間を忘れてはしゃいだ反動を目の当たりにしていた。 「俺らお先に」 「あぁ、お疲れ」 「真亜子、またね」 「うん。おやすみ」 歩いて帰る紘子と中嶋くんに手を振って、私とモリは代行運転を待つ。 昔付き合っていたという二人の後ろ姿は、煌々と光る自動販売機の前を過ぎた二人の影はすぐに見えなくなった。 「もうすぐ、夏が来るな……」 少し離れて立つモリの見上げた先に瞬く星の名前はわからない。 さっきまで中嶋くんと一緒になっておちゃらけていた人と同一人物だとは思えないモリの雰囲気に、エンジンをふかして通りを走り去る車へと顔を逸らせた。
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