side K-2

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「帰ってくださいっ!」 目を思いきり瞑って、震える声で精いっぱい訴える。 ひどい。 こういうことができる人だったなんて。 軽く落とせるような女だと思われていたなんて。 脳内王子様像がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。 なにも言わない南条さんは、この体勢を変えないままゆっくりと顔を離し、うなだれるように俯く。 緩く固めた前髪がひと筋落ちて、ちょっと疲れた顔に見えた。 「……」 ……あれ?  私、この前髪が全部落ちているところ……見たことが……ある? 「……今日のことは、ちゃんと記憶に残りますね」 ポツリと、南条さんがこの距離じゃないと聞こえないような声を出した。 私は何も返せないまま、視線を合わせずに斜め下に向かって話している南条さんの前髪を見つめ続ける。
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