side N

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「誤解?」 「…………いえ、なんていうか……」 言葉がうまく出てこないようで、おどけたように「ハハ」と作り笑いをする小宮さん。 その真意が語られないことに苛立ちが募る大人げない俺は、 「なにがおかしいのですか?」 と、硬い声を被せてしまう。 小宮さんの愛想笑いの上がった口角が、ゆっくりと下がる。 「はっきり言ってもらわないとわからない」 「……」 への字になって歪みだす唇。 その横顔が背面の窓からの灯りと影の繰り返しで、コマ送りのように目に映る。 「つ…………つきあってるんですか? 私。……南条さんと」 ラストひとコマでやっとこちらを向いた小宮さん。 そのバッグを握る手に、ぎゅっと力が入ったのがわかった。  
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