第1章 禁断の恋の始まり

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悲しくて、涙がぼろぼろこぼれてきた。こんな曖昧な関係で、こんなどさくさまぎれに。あたしの思い描いてたシチュエーションと天と地ほど違う。 「え、もしかして初めてだった?」 あたしの涙に気づいて、けいちゃんが慌てて言う。あたしは大きく首を縦に振った。 「もしかして嫌だった?」 「嫌っていうか…、可愛かったから、なんて理由で簡単に女の子にちゅーしちゃうけいちゃんが信じられない。誰にでもするんですか、こんなこと」 あたしは激しくけいちゃんを詰る。 「誰にでもなんてしないよ」 いつもはほわほわと喋るけいちゃんが、力強く断言する。その凛々しさに一瞬キュンとなったのも束の間。 「千帆が好きだから…って、俺、言ってなかったっけ?」 けいちゃんは、自分で首を傾げながら、あたしに訊いてくる。何この脱力感。 今度はあたしは、ぶんぶん首を横に振った。聞いてない聞いてない。 「え、だって、一緒に映画見に行ったり、今もこうしてドライブ行こうとしてるんだし…俺の気持ち、わかってたでしょ?」 続く質問もあたしは首を横に振る。あたし、そんなに自惚れてません、けいちゃん。 「あー、そうなんだ。じゃあ、付き合ってるつもりでいたの、俺だけ?」 「うん」 「そっかあ」 けいちゃんは、ふうと大きく溜息をついて、ハンドルに両手を組んで載せる。その腕に顔を置いて、助手席のあたしの方を見た。 あ、なんか反則、その縋ってくる子犬みたいな目。 けいちゃんに怒ってるのか、どさくさまぎれに暴露された思いが嬉しいのかわかんないまま、あたしはドキッとなってしまう。 「でも千帆は俺のこと好きでしょ?」 自信たっぷりにけいちゃんは言う。何処から来るんだろう、その余裕。顔の良さか、年の功か。 「好き…だけどっ」 言わされた感満載の告白に、けいちゃんは万事解決、みたいに満足気に言う。 「じゃあいいじゃん、付き合ってる、ってことで」 「え?え?え?」 なんかすっごい損した気分。告白した? された? されたの? 私。 「よろしくね、千帆」 けいちゃんは、アイドル並みの爽やかなスマイルをあたしに向けた。 「えーーーー」 肝心なとこ、すっぽかされて、あたしは思い切り不満で、口を尖らせた。 好きな人から、告白される。どきどきの一大イベントが、超おざなりにされたまま、事態だけが進行しようとしてる。こんなの、やだ。 「ダメ?」
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