第ニ章 後編  機械人形は懐かしい未来の夢を見るか

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夜も遅いということで、遺跡前から首都に戻る道中で野宿したソウタたちは、翌日の昼にソレノイドキューブが埋め込まれたままの機械兵士を持ってクバラの自宅へと向かった。 「おお! キューブだけでなく、機械兵士そのものまで持ってきてくれるとは! 頼む! ワシにそいつを売ってくれい!」 目的の物だけでなく、機械人形よりも遥かに希少な機械兵士を前にして、クバラは興奮してソウタたたちへと詰め寄った。 見た目相応の少年のようにはしゃぐクバラの前へ、リュクスが歩み出た。そして、昨日の夜にパーティ全員で話し合って決めておいた答えを口にする。 「クバラはん。お金なんて要りまへん。ただ一つだけ、ウチの話を聞いてください」 「ほう、なんじゃ?」 リュクスは機械兵士が喋ったことや、その内容についてクバラに話した。 話を聞き終えたクバラが、今度は実年齢相応の重みを感じさせる口調で言い放った。 「……やめじゃ」 予想外のクバラの言葉に、リュクスが目を丸くする。 「ど、どういう意味でっかクバラはん?」 「ソレノイドキューブをコージィくんの動力源に使うのはやめじゃと言ったんじゃ。それよりも、この機械兵士を直してやった方が面白そうじゃからの」 「でもクバラはんは、昔の技術をなぞるだけの今の機械士のことをよく思ってへんかったんじゃ……」 リュクスの言葉通り、先日クバラは先人の残した技術をなぞるだけの、今の機械士の在り方を批判していた。そんな彼の口から自分の造った機械の完成よりも、遺失機械の修復を優先するという言葉が出てきたことに、リュクスが驚きを隠せなかった。 「ワシは何も遺失機械の復元や複製を馬鹿にしとるわけじゃない。ただワシは見てみたいだけじゃ。人と機械が共存する世界をな。この機械兵士が言っておった『懐かしい未来』……ワシは必ずそいつを実現してみせるぞい!」 拳を握りしめ、クバラは高らかに決意を表明した。 「ウチが聞きたかったんはその言葉です! クバラはん! 機械兵士だけと言わず、ソレノイドキューブもタダで持っていってください!」 「ちょ、ちょっとリュクスちゃん!?」 「タダであげるのは機械兵士だけって話だったよね? みんなでそう決めたよね、昨日の夜!」 感極まった声でとんでもないことを口走ったリュクスにプレアとアリアがすかさずツッコミを入れる。
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