その瞬間

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
  ただ何とは無しに、ふらりとコンビニでも行こうかなと家を出た。 家からコンビニは公園をつっきると早く着く。 この時期は紅葉で園内の木々も明るく色付き、歩いていてとても心地が良い。 秋風を頬に受け、清々しい気持ちで並木道を歩いていると…… 「待って、待ってったら……!」 前の方から、犬が駆けてくる。 それに引かれる形で、女の子が走ってきていた。 珍しくもない、この公園はジョギングや散歩道によくされているのだ。 女の子が脇を通り過ぎる。 その瞬間、先程まで受けていた風とはまた違う風を身体に受けた。 「あっ」 通り過ぎた女の子が、小さな声をあげる。 振り返ると、ちょうど鳩が飛び立つ瞬間だった。 舞い散る紅葉。 風に揺れる髪が、さっきの風を思い起こさせる。 何気ない一瞬。 その瞬間、僕は確かに彼女に恋をしていた。  
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!