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だけどそれからほどなくして、おばあちゃんは死んだ。だから俺は、猛禽類に目をつけられた鼠みたいに怯える日々を過ごすこともなくなった。
九四歳だった。
いま思えばずいぶんな長生きだった。
毎日のように昔からまつわる逸話や迷信を好き勝手に語って、本当はまったく別のことで怯えていたのに、細まった黄色い目玉で俺の怯える姿を楽しそうに眺めていた。
そんなおばあちゃんがいなくなって、その頃の俺は解放されたんだか苦しいんだかよくわかっていなかった。
ただ言えることは、俺はまだおばあちゃんの言葉の呪縛から逃れられていないということ。
俺も信じこんでしまったんだ。噂話とか、迷信とか、眉唾とか、そういう類が本物なんだって。
その粘っこしい気持ちがなかなかほぐれないまま八年が経ち、俺は中学二年生になった。
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