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「本当に足掻いて、みっともなくなる恋が、一番なんだけどな。って、俺の持論。」
軽くつまむだけの料理は皿から消え、短い話も終わろうとしていた。
「ラテン曲の歌詞だってそういうの多いだろ?
愛してるってフレーズよりも嫉妬に狂ってることのが多い」
でも、ただ感情をぶつけるだけじゃない。
愛しているから解ってほしいと切望し、足掻き、喚き、同じだけの激情を受け容れる器の深さも同時に持ち合わせられるからこそハッピーエンドになるのだ。
「割り切れる、諦められる、みっともなくない。ってのは裏返せば、
割り切って諦めてみっともなくならないでくださいって意思表示だよ。」
恋は甘いだけの時間。
愛は苦しみもすべて飲み込みたくなる欲望。
「終わってからも思いたがるのは、俺は本気だったのにって跡付けしたいからなのかもな。」
「だったらさ、ちゃんとみっともなくなって見せてよ。」
「…うん?なにが?」
「だから、いまの恋を、よ!なんだかいまの愛紗は諦めてるつもりで相手を切り捨ててるように見えるわ。」
テーブルの上に置いてあった俺の手に、美佳の手が重なる。
「諦めて知らん顔するなんて情熱的じゃないわ。言いたいことがあるなら全部考えてることも感情もブチまけて怒ったらいいのよっ」
ギュッと彼女の指が手の甲に食い込む。
「ほんっと!そんなクソみたいな男なんか引っ叩いてやったらいいのよ!アンタに絡んだ外野なんか関係ないわ、愛は一対一の勝負でしょ?相手の為に一歩引くなんて逃げるなんて許さないんだから」
美佳の目には静かに爛爛と怒りの炎が宿っていて、俺の為に怒っていることが理解できるから、なんだか嬉しい。
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