『明け方の眠り姫』

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「……夏希さん、見て。また降って来た」  ふたたびちらほらと舞い始めた雪に、あの日を思い出す。  風花舞う空の下、幸せそうに笑い合う二人。  埋めようのない寂しさと一向に消える気配のない喪失感から逃げるために、たぶん私は要くんを利用している。  自分の愚かさを自覚すればするほど、瞳は涙で濡れるし、また眠りは浅くなる。――ますます私は、要くんから離れられなくなる。  なんて私は、汚い大人なんだろう。 「ほら、もう行こう? 今日は牡蠣鍋にしたよ。お酒が進みそうでしょ?」  空を見上げ立ち尽くす私を、要くんが現実に呼び戻す。  自分が想う人には決して想われることのない、悲しい現実。 「……いいわね。今日はとことん飲もうか」  要くんには、何もかも見透かされているのかもしれない。  それでも汚い大人の私は、そんなことには気がつかないふりをして、この年下の優しい男に身体を預けた。
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