第1章

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 そして三月の終業式。彼女は学年が一つ上がる。そして私も学年が一つ上がる。別れに一歩近づいていく。春の風がすり抜けて緑が揺れる。サーッと言う音とともに私と彼女は対面する。 「あ、あの、はじめまして」  私が声をかける。 「はじめまして。同じ学年の子よね。名前は……」 「新島晴香です。覚えていただいて光栄です!」  簡単に自己紹介をする。 「あら? どこかでお会いしたかしら。どこかで聞いた声だわ」  ……それもそうだ。なにせ二十三回も違う言葉をかけているのだから。 「最初に聞いたのは、『頑張ってください! 次があります!』でしたね」  少し驚いた顔をする。風が吹き抜けて雰囲気が変わっていく。 「どうしてそれを……その声ってあなただったの?」 「はい。私です。私は、私は――――」  声が震える。……うまく声が出せない。 「……ゆっくりでいいわ。私に伝えてみて」  その声で少し安心する。ゆっくり深呼吸してもう一度声を出す。 「私は、あなたのことが好きです――――」
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