起臥魯迅2

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俺が扉を開けて階段を降りている途中。確かに声がした。草を踏み分ける足音が6つ。つまり三人分。それと一緒に声がした。 機羅くんの声だ。 「蓮香気をつけろ」 まぁ相手が悪かったな。気をつけても俺相手では無理だ。 作戦は良かったが、そもそも駒の能力が低い。将棋で言うなら歩対飛車だ。チェスで言うならポーンと対クイーンだ。勝負にならない。 ただあの林道機羅は何とも興味深い奴だ。分厚い仮面ってのも気になるが、それ以上に。 この俺と間近でやり合ったくせに、力をセーブしていた。あの一瞬の攻防のなかでわざと全力を出さなかった。 圧倒的とも言える相手に対して手を抜いていた。武術家のくせに。 しかも気付かれない様に、こそっとだ。俺はもちろん、蓮香ちゃんと時雨くんにも。 「次は本気でやりあおう」 俺は彼らとすれ違う時、林道機羅の耳元でそう囁いた。ほんの意地悪のつもりだった。 けれどあいつは無反応だった。眉ひとつ動かさなかった。 俺が言った冗談にはあれだけ激情するくせに、そこは無反応? 今考えただけでも笑いがこみ上げてくる。
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