② 俺様の秘密

4/5
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
トルソ横のラック。 今日イチときめいたそのアイテムは最後のひとつを残すのみ。 無意識に手が伸びる。 と――。 指先に触れたのはか細い女性の指。 そして、美しい声音。 「あ、ごめんなさい」 その声に無意識から引き戻されると、目の前には一人の女性。 「あ…」 俺は思わず地声をこぼす。 薄茶色のニットにチェックのミニスカート。 セミロングのヘアにはベレー帽がよく似合う。 まるで理想の女性。 まてよ、俺はこの女性を知っている。 今日一日を振り返る。 朝おとずれたカフェにも、書店にも、雑貨屋にもこの女性はいた。 これは運命――。 容姿にファッションセンスだけでなく、一日の行動もすべて、理想の女子・理子とまったく同じ。 俺はまさに今、理想の女性を見つけた! 恐る恐る彼女に声をかける。 「これ、どうぞ―」 「あ、いえ。これ、最後の一着みたいですし、どうぞ」 「いいえ、あなたのほうが似合うと思うし」 「じゃあ…」 女性は、ブラウスを手にとると、おもむろに俺の身体にあてがう。 「やっぱり似合う!よく似合いますよ(にこっ)」 エンジェルスマイル。 俺のハートは完全に撃ち抜かれた…。 「ね、どうします?買います?」 「は、はい」 「わぁ、よかったぁ。ブラウスも喜んでますね、きっと(にこっ)」 ズキューン!
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!