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「おはよー、リン」
やっぱり帰ろうかな、なんて考えていた時に背後からポン、と肩を叩かれて、私はビクッと体を揺らせた。
声の主は亜美で、当然だけど何も知らない彼女はいつもと変わらずニコッと明るく微笑んだ。
「……亜美。……おはよ」
「あれ、どした? なんか暗くない?」
私の顔を見た亜美が、びっくりしたみたいに目を丸くする。
「んー。ちょっと、寝れなくて……」
「なんで? 悩み事?」
「……ってゆーか……」
例の話を亜美にしようかどうか迷いながら、下駄箱に差し掛かった、その時だった。
靴を履き替えている折坂くんとちょうど出くわしてしまい、私はギクッとその場で足を止めた。
「…………っ」
カァっと、体中が熱くなってくる。
ドクン、ドクンって嫌な動悸がしてきて、私は根が生えたみたいに一歩もそこから動けなくなってしまった。
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