第三章

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つまらない返答をしやがったら、どうしてやろうか… そう思った時、 ようやく奴が口を開いた。 『理由はない、と、言いたいけど、言っていいのかさえ、正直わからない』 と、意味不明な言葉。 はっ? 眉根を寄せた俺。 そして、更に続く言葉。 『はっきりしてることは、亜美以外に好きな女がいるっていうこと、』 はぁ? 好きな女、 ………… マジかよ、 いるのは言われなくても知っていたけど、 それを俺に言っちゃうんだ… コイツ、 馬鹿なのか? 困惑する俺に、 亜美と付き合う事になったいきさつを、必死に話し始める男。 いやいや、言われなくても全部知ってるけど? この展開には、 俺には予測不能な、さらなる裏でもあるのだろうか… 悩む俺に、田上悠斗は言った。 『亜美が俺との付き合いを望む限り、俺から別れるつもりも、ない、』 そう、 ハッキリと… 決定権は、亜美にあると… そう言いたいのか? にしても… 『意外ですね?』 嘲笑。 『えっ?』 キョトンと目を丸くした田上悠斗。 『さっき、嘘がお上手だ、と褒めたばかりなのに…今度は呆れるほどに馬鹿正直だ…』 ” 好きだから付き合っている ” 絶対そう言うと思ったのに… 『それ、褒めてる?』 首を傾げた田上悠斗に、 『さぁ…』 曖昧な返事を返す。 『田上さん、あなたは、俺が怖くはないんですか?』 最初に目があった瞬間から、 俺に対する恐怖が、奴の瞳には見えない 俺には、 それが不思議でしょうがなかった…
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