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俺は平静を装ってそう言った。
「ああ、大丈夫大丈夫。ユーキ君は?」
おっと、くん付け。
それと、あまり大丈夫ではな――。
「――ユーキ君」
思考が途切れた。
だって、トールさんが俺の顏に――頬に手を添えている。
手が冷たいと感じるのは、きっと俺が熱いせい。
そして、頭を撫でてきた。
「……な、なんです、か?」
「んー? 失恋お疲れ様、と思って」
……ああ、そう、そういう事。
「頑張りましたねぇ、ほんと」
馬鹿にしてんのか、と少し、むっ、とする。
けれど、トールさんの手は優しかった。
優しくて――もう、やばい。
「――ふはっ、重て」
うるせ。
「よーしよしよし」
動物にするみたいに俺の背中をさするトールさんに俺はのしかかっていた。
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