第1章【誕生】

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 アルバイト店員の女性の手が、お釣りを受け取るさいにかすかだが自分の手に触れる。  それだけで良夫は、固まってしまう。  自然と顔がほころぶ。ついついニヤニヤとしてしまう。 「今日はいい日だねぇ」  コンビニを出ると、入り口横に五人、ガラの悪い、高校生と思われる若者男子が座り込んでいた。  チラリと見たが、良夫はとくに気に止めず、彼らの前を通りすぎた。 「おい、おっさん」  突然、呼び止められた。 「え……」  20分後、良夫は数人の若者に囲まれ、薄暗い空き地で倒れていた。 「立てよおっさん」  若者の一人が、良夫の土手っ腹を蹴りつける。 「ぐふっ!!」  良夫は苦痛な表情を浮かべ、腹を押さえてうずくまる。  さっきより、若者の数が増えていた。 「俺が何をしたって言うんや……」  かすれた声で、涙を浮かべながら言う。 「気にいらねぇんだよ。すれ違いざまに人の顔見て笑いやがってよぉ」 「違う! 笑ってない」 「笑ったやないかい」  若者は良夫の顔を蹴り上げる。  良夫は口の中が切れたのか、血を吹き出した。
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