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そう言いながらも私は少しだけ頬を緩ませて笑った。
無欲すぎるお願いをこれは叶えるうちに入るのでしょうか?
「繋ぎますから、降ろして下さい」
その言葉で満足した彼は私を降ろして手を差し出してきました。
それはもう、今すぐ殴りたいほどの鬱陶しい笑顔を顔に浮かべて。
私はその手を乱暴に掴むと、彼を引っ張る勢いで道を歩き進めることに。
歩いている最中に何回か手を放して意地悪してやろうとも思ったけど、嬉しそうにニヤニヤしてるのがうざいったらなんのって。
何でこんなにうざいんだろうと思いながら相手の顔を凝視していると、いきなり抱き着こうとしてきた。
「嗚呼可愛い!結婚して!」
「うざい...うわっ、やめっ...!」
スリスリと私にすり寄ってくる吸血鬼に空いている手ででこぴんをかました。
「うざいって、酷いなあもう」
クスクスと笑いながら頭を掻いている彼を暫く睨んでからため息をついた。
「ほら、早く案内して下さい」
「そんなに焦らなくてもこれから暫くは一緒だよ」
「うるさい!」
懲りずに私の事をからかってくる吸血鬼にそう言って怒ると、もう繋いでいる手を放そうとした。
手の力を抜いて解こうとしても、全然解けることはなかった。
「いい加減離して下さい!」
手を振りながらそう言っても彼は全く離す気なしで。
「ほら、手を離したらはぐれちゃうよ」
「こんな誰もいない道ではぐれるも何もありますか!」
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