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付け焼き刃で雇った割りに彼はうまく立ち回ってくれたと思う。
「おや、アルベルタ君、また面白い子を雇ったね。」
という嫌味にも笑って流していた。
いや、意味が分からなかっただけか。
その後適当に入った酒場で私たちは多いに語らい意気投合した。
彼は想像以上に頭の切れる青年だ。
ぜひ正規の秘書になってくれと頼んだが、これでも勉強中の身だという。
「将来は何を?」
「弁護士を目指してます。しかし、何分貧乏な家ですからね。学費を貯めるのもやっとですよ。」
ジョッキ片手にため息をつく。
「学費なら私が出してあげよう。給料とは別に。屋敷は少し田舎だが大学に行くときは休みを取って良いから。」
酔っていたせいか、是が非でもこの若者を雇わなければ沽券に関わると思い始めていたのだと思う。
時が経つにつれ意地になっていく私に圧されるように承諾した。
「きみ、歳は?」
「二十歳になりました。」
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