ルセテの目的

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闘技場内には様々なモノが投げ込まれ"ルセテ"という私の名前が連呼されていた。ブーイングも覚悟していたのに、真逆のような状況に戸惑いを隠せない。 私は大きく息を吸い込んだ。 この私がハワードを倒した。もちろん私の力などは微力で、蓮さんから借りた名刀や宝具であるポルンのお陰だ。 それでも、私は自身の内に秘められた強い意志の力を感じずにはいられなかった。もしかしたらこれが蓮さんの見ている世界なのかもしれない。 目を閉じ、呼吸を整えていると突然歓声が鳴り止んだ。そして、ゆっくりと目を開くとそこにはメンデルが立っていた。その表情からは何も読み取れないが……。 「僕の予想外れちゃったねぇ。」 「い、いえ。ギリギリでしたので、その、運が良かったんです。」 うまく言葉が出てこない。苛立ちなのか、殺気なのか、少し漏れたメンデルのオーラに私は飲み込まれかけていた。鼓動が早くなり膝が震える。私の生存本能が二者間の圧倒的な差を感じ取っているんだ。 「まぁ、その刀は分かるよ。かなりいい得物だ。でも、それだけじゃあキミがハワードに勝てるとは思えないんだよねぇ。もしかして、観客席のオーラ機器を操った?」 下から上へと私を品定めするかのようにメンデルは視線を送っている。 「の、能力の秘匿が許されているはずです。これ以上は――。」 「確かに。でも知りたいんだよねぇ。そうだ、僕と戦闘しよう。能力の秘匿も許されているけど、戦闘の自由もあるよね。」 溢れ出るオーラの量が徐々に増している。私はここに居るだけでHPが減っている気さえしていた。 「それは……。」と、言いながら私は一歩後ずさりした。その直後――。 『おい、警報だぞっ!』 ポルンの声に数秒遅れて、私のPDAがけたたましく鳴り出した。警報アラームは七段階ある緊急レベルのMAXを示している。もちろん、私のだけではなく会場中のプレイヤーのPDAが鳴っているのでかなりの大音量だ。 ポルンは宝具の能力として様々な機器に侵入し支配できるが、PDAだけは操作不能。つまり、この警報アラームは本物。 侵入者だ。
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