奇人の血

16/36
14318人が本棚に入れています
本棚に追加
/322ページ
「これからどうするのさ?」 「手当たり次第に村を転々として行く。遠目ながら王都の様子も見たいから、先ずはこのまま真っ直ぐ南に下って《レミオス》を目指す。」 「《レミオス》?大きな街?」 「街……ではあるな。《キャンベル》と比べればかなり小さいが、少なくとも村では無い。」 《レミオス》。王都の北に位置する街の一つだ。他にも多くの街が王都を囲むように点在している。土地の安さから王都を職場とする労働者層の家庭に人気があるようだ。 「此処からは道中に人里が増えるだろうな。これだけ街があって全滅という事はないだろう。」 「うん……でも、宿屋の空きが心配だね。」 「まあ……少なくとも《レミオス》までに通る村で夜を明かすなら覚悟しなければならないな。」 夜営はもう慣れたものだ。《キャンベル》で買い揃えた新しい道具があるから夜風の心配は少なくとも無い。ジェムも余裕の表情だ。 「じゃあ、先ずはあの村から行く?」 「は……?あの村?」 地図から目を離してジェムを見ると、俺達の右斜め下方を指差していた。 その方向に目を向けてみると、粗末な木屋の住居が点々と建っているのが見えた。 あれは……村か?地図に載っていないぞ。 「……去年の始めに発行された地図だぞ。載っていないなんて事があって良いのか。」 「うーん……新しい村にしては廃れているような気がするけど……」 「………」 王都生まれの俺は王都に近ければ近い人里ほど訪れた事が無い。旅行に行くなら必ず遠方になるからだ。従ってこの辺の地形にあまり詳しく無いのだ。 当然ながら山腹にある村なんか行った事が無い。此処から見る限りではかなり寂れた印象だ。人は居るのだろうか。 「………まあ良い、行ってみるか。」 「え、本当?」 「ああ、この方向なら寄っても時間の無駄にはならないだろう。」 そう言いつつ村の方へと進行方向を変える。そこへ行くには正式な山道から外れて自然へと飛び込んで行かなければならないようだ。
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!