第七章 良いこと尽くし

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 社長というものは、早起きして誰よりも先に出勤するものだから朝に弱くても早起きしなくてはならない。 「よし、出来上がりっと」  出来た料理を弁当箱に詰め終わり、料理を移すのに使っていた箸を置き風呂敷に包んで、まだ誰も起きていないことを確認してから椅子に掛けてある鞄の中に仕舞う。  朝ご飯は弁当を作った時の余り物でのまかないだ。材料が同じだから、朝から凝ったのを作ってしまいそうだけど。  鼻歌を唄いながら余った材料で人数分の朝食を作り、珈琲を淹れている間に両親を起こしに行く。 「朝―――」 「おっはよ―――なふん!!」  扉を開けた瞬間母さんが飛び出してきたが、冷静にカウンターを喰らわせる。 「朝のキスをしてく―――れヴぉるふ!!」  続いて父さんも出て来たが、同じようにカウンターでアッパーを喰らわせる。 「おはよう父さん、母さん。朝食で来てるよ」  そして何事もなかったかのようにそう言い残して部屋を出て行く俺。ここのところ、毎朝のように似たようなことをしてくるので特に驚かなくなった。  一番最初は反応し切れず、押し倒されて変なことをされ掛けたが。それをしてきたのは父さんなので、前にやった時と同じように最大の弱点を蹴った。  父さんは顔を真っ青にして、大量の脂汗を掻いて床に突っ伏した。その時俺は息を荒げながら罵倒したのだが、逆効果だったようだ。  何で逆効果だったのかは、今でも理解出来ていないしする気もない。 「今更だけどさ、毎朝そういうことして飽きないの?もしかしてM体質なの?あたしに殴られることに快感を感じてるの?」 「そんな訳無いわよ!私はただ明音ちゃんと触れ合いたいだけなのよ!だから何度殴られようが何度蹴られようが立ち上がるわ!」 「あっそ。でも・・・・・・度が過ぎるのは良くないわよ?」 「ひいぃ!?」  笑いながら睨み付けてやると、顔を真っ青にして物凄い速さで後退りした。怒らせてはいけないと解っているなら、そんな変態行為に走らなければいいのに。  変態行為に走らなかったら怒ることは無い。そして堂々と母親だと言える。  何度か他クラスの女子と出掛けることがあったのだが、その度に付いて来ている。隠れているつもりだろうけど、バレバレだ。  その度に「あの人誰?」と訊かれ、そう訊かれる度に誤魔化している。あんなことしないで、大人しくしていれば見た目通りの人なのに・・・・・・。
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