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目の前を特急電車が走っていく。 強い風に目を細めながら、乗り損ねた電車の旅立つ姿をぼんやりと見ていた。 昔からいつもこうだ。 買ったばかりの洋服で外に出れば車に泥水をかけられ、奮発して購入した可愛いパンプスはヒールはたった1日でぱっくり折れてしまう。遊園地に行けば、迷子が泣きながら私についてくるため世話をする羽目になるし、雨の日に傘をさせば、何故か突風が私を襲って傘が壊れてしまうし、晴れの日に洗濯物を外に干せば、鳥に糞をかけられる。 (ついてないなあ…) 溜息を吐き出し、俯いた。 周りからの視線が苦しい。 水色のワンピースは、ところどころ赤く染まっている。誰がどう見ても分かる、血の色。 今日は友人の結婚式だった。 新品のワンピースはもう皺だらけ。 (結婚式、行きたかったな…) 式場まであと少し、というところで事件は起きた。なんと、私の前を歩いていた女性が、反対側から来た黒いパーカーの男にいきなり刺されたのだ。 辺りは騒然となるも、皆遠巻きにその光景を見ているだけで血を流して横たわる女性を助けようともしない。 だから、仕方なく私が処置をした。 派手に出血していたが、深く刺されたわけではないようで安心した。 救急車が来るまでずっとその女性を励まし、手を握っていたため、こんなことになってしまった。 (楽しいこと、ないな) 人のためにはなったが、親友の晴れ姿を見ることはできなかった。それが、何よりも辛かった。 低い振動音。 手に持っていたクラッチバッグが震えていた。ゆっくりと開いて、新規メール着信を知らせる携帯を取り出す。 「ん?」 違和感を覚える。 送信元も送信先も、同じアドレス…つまり、私が私宛にメールを送った、というのだ。こんなメール、身に覚えはない。 (え、なにこれ?バグ?) 最近買い換えたばかりなのにと眉を寄せて画面に触れる。画面表示が変わり、メールの受信日と件名が表示された。 受信日は、今日。 件名は、『未来の私から過去の私へ』。 (未来の、私?) 未来にいる私が、過去の私ーー私にとっては現在の私、だがーーにメールを送ったというのか? そんな馬鹿な話、あるわけがない。 首を横に振り、気を取り直す。 これはきっと何かのバグなのだ。それか、誰かの悪戯かもしれない。 そう思い直して、私はそのメールを開いた。
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