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「いつだ!」
「先々月かな、産まれたのは。二ヶ月になるのかな、赤ん坊が退院をしたのは先月だ。未熟児で保育器から出られなかったからだ」
次郎は目の前の慎の反応を楽しむように続ける。
「誰の子だ、とは聞かないんだな」
「当たり前だろう!」
頭を振った。
「私の子だ。間違いない。茉莉花は男には不器用な女だ」
「同感だね」
「何故、一言連絡を寄越さなかった。茉莉花も……お前も……」
「全くだよ」次郎は肯定する。
「そこは僕も詫びよう。彼女も責めないでやってくれ。去年はいろいろ重なった。半年前に祖父を、先月に祖母を亡くした。茉莉花には祖父母は実の親より頼りにしていた存在だったから、彼女の落ち込みようは大したものだった。茉莉花自身も盲腸で入院したんだが、その時に妊娠がわかった。それに加えて彼女も出産まで入退院を繰り返した。正直、君に連絡を取るどころではなかった」
「盲腸は……いつの話だ?」
「春先だったな、僕が復員する少し前だった」
「やっぱり……。あれは茉莉花の声だったんだ」
次郎は片眉を上げる。
「『助けて』とはっきり聞こえた」
胸騒ぎをそのままにするのではなかった。慎は悔やむ。
「僕がここに来たのはね」と次郎は言う。
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