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「さて?」
影虎くんがオレの顔を無表情に覗きこんだ。
ぱしぱし瞬きをすると涙がじわじわ浮いてくる。
ふうと影虎くんが息を吐いて、オレの頭を撫でる。
「中虎はあれでいて優しいところのある奴だ、向かって来る者には相応の礼を持って戦うだろうが、命までは奪わんだろう」
「ほ、ほ、ほんとうに?」
「赤虎が出ればあるいはな……あれは同族以外には手厳しいから、料理を押しつけて中虎が出たのだ。中虎はここの生活が気にいっている。退学にはなりたくないだろうから、そうそう無体は働くまいよ」
「よかった」
ほっとして息を吐くと、影虎くんがオレを持ち上げて体をぐるりと回して横に座らせると、匙を持ち上げた。
「飯だ」
その言葉にぴんと背筋が伸びる。正座して緊張しているオレに、影虎くんが椀を持ち上げて匙で汁をすくうとふうふうと息を吐いて差し出す。
ごくって喉が鳴って、唇が震えた。膝の上の手がぎりぎりと音をたてる。
「口を開けろ」
影虎くんに言われて、口を開けようとするんだけど、どうしても口が開かない。ふわふわ立ちのぼる湯気が鼻をくすぐる。
これ、こんぶだ。カリカリの中にも入ってるから、匂い知ってる。
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