4.一蓮托生、ここになし

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「ねぇ……リレーの説明してもいい?」 隣にいたというのにも関わらず、樟葉のことを忘れていたことは口に出さずに小さい子にでも言うかのように「いいよ~」と言えばニコニコと頷かれた 最初はただうるさい野蛮人かもしれないと思ったが、こうみれば素直な良い奴なんだろうなと考えていれば目が合い笑顔を向けられた 「おほん!確か、山野君と神城君ペアだったよね?男女って言ってもうちは男子校です……つまりぃ?」 山野とだった事に気付かなくて、樟葉に言われてホワイトボードを2度見した……ヤバいじゃん身長ほぼ一緒だけど、運動部の山野と二人三脚って足引っ張るに決まってるだろ 「……つ、つまりぃ?なに、なんだよ…焦らすな」 「焦らしたわけじゃないよ、そのまんまで二人三脚の際にどちらかが女装をしなきゃならないの!体育祭1位2位を争うくらい萌え競技なのら!」 何が『なのら!』だと体を揺さぶりたくなったが、グッと堪えて山野を見ればコイツも何か思ったのか俺の方を見ていて自然と目が合った クラスの子達が山野との方がいいだろうと、してくれたにしてもだ……ただの二人三脚ならまだしても。女装って誰に対してのサービスだ、アホか 「やっぱり女装するのは、後輩や先輩にもキャーキャー言われる山野君が適任だよなぁ?」 「何言ってんだ、お前……神城もしかしたら似合うんじゃないのか?そういうの」 睨み合い『女装』という最悪の罰ゲームを押し付け合う醜い不当だと思いながら、どうにか納得させようとしようと思った瞬間……樟葉では無い身長の低い子が近寄ってきた 「……あ、あの僕は…その神城君に女性側をやって欲しいんだけど。や、えっと…や、山野君にはカッコイイ服着て欲しいのもあるんだけど…」 目線を伏せながらもこちらをチラチラと見てくる、クラスの学級委員の笹浜だと気付いたが……笹浜の目線はほぼ山野へと向けられている気がする つまり笹浜は山野の隠れファンだったのだろう、赤くなった顔が何よりの証だ……項垂れそうになるも唇を噛み締めて山野を見る 「……だ、そうだが…神城くん?」 憎たらしくも口角を上げた山野の顔を、初めて力一杯に拳で殴りたくなった
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