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華やかな王都の一角には、さびれ切った貧民街があった。
王都からそちら、エルストと呼ばれるゴミ溜めへ一歩でも踏み込むと活気は無くなり、飢えた人々があちこちに転がっている。
男はそのうちの1人だった。
男の歳は24。しかし、骨の浮き出た身体に薄汚れた顔、ボロを纏った姿は彼をより老けて見せた。
男が12の時、母が死んだ。
父のことは顔も知らず、エルストで男の境遇はそう珍しいものでもなかった。
優しい母がいただけ、男はまだマシとも言える。
王都の貴族は我儘で傲慢、また無駄遣いに贅沢が大好きだったので残飯を漁るのは楽なものだった。
ただ見つかると厄介で、鞭で叩かれたり殴られたりした。だから最低限の食事しか摂れず飢えるばかりだ。
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